自閉スペクトラム症 トレンド
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2025.11.30 18:00
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お子さんの発達について率直に悩みを綴った親御さんの記事が、一つの話題になっているようです。
私にもその記事が目に留まりましたので拝見しました。
その記事に対してはさまざまな御意見が散見されましたが、ここまで率直に気持ちを書けるのは、それだけ「我が子を大切に思っている」という証ではないかと私は感じます。まずは、これほどまでにお子さんのために動き続けている親御さん自身の頑張りを、心からねぎらいたいです。
いまその方に必要なのは、寄せられる様々な意見に翻弄されることではなく、気持ちが少しずつ整理されていくための「時間」だと、誠に勝手ながら拝察いたしました。そのため、あえて記事の引用はしませんが、専門家として一般的なお話を少しだけ補足させてください。
もちろん、その記事の方個人へのコメントではなく、私の医療発信をいつも読んでくださっているフォロワーの皆様へお届けしたいメッセージです。
まず重要な点として「発達障害」は「神経発達症」という言葉に置き換わっています。
これは単なる言葉遊びではなく、「必ずしもその人の人生において『障害』となることが決定しているわけではない」という側面を反映した変更です。
まだまだ「神経発達症」という言葉は社会に十分認知されておらず、伝えたいことをきちんと理解してもらうために、現時点では我々も「発達障害」という言葉を使う場面があるのは事実です。しかし、これからは「発達障害」という言葉が誤解を招きやすい場面もあるため、「神経発達症」という言葉が浸透していくことを望みます。
続いて、神経発達症は「ある/ない」の二択ではありません。
私はよく視力を例に親御さんに説明をしています。
例えば視力2.0は「良い」、0.1は「悪い」と捉えられますが、0.8はどうでしょう?人によって「良い方じゃないかな」とも「不便だと思うよ」とも感じられますよね。
神経発達症の特性もこのように「連続体(スペクトラム)」になっており、どこから診断が必要かは「日常生活でどれくらい困りごとが起きているか」が重視されます。ちなみに「自閉症」という言葉が出てきていますが、こちらも現在は「自閉スペクトラム症」と呼ぶのが正確です。「神経発達症は『スペクトラム』である」という点が名前からも強調されています。
親御さんとしては「診断名がつく/つかない」を気にされるのは自然なことです。しかし本当に重要なのは「診断を付けてあげる必要があるのか/ないのか」という視点です。
いかにも診断が付きそうな発達のでこぼこがあっても、それによって日常生活に明らかな支障が生じていなければ、必ずしも診断や治療を必要としないこともあります。
神経発達症は診断基準のあいまいさや、一人ひとりの症状の多彩さ、さらには「同じ病名でも同じ対応をすればいいというわけではない」治療の多様性から、実態が捉えにくい領域です。さらには、高まる社会ニーズに対して自信を持って対応できる医師が不足しているというのも、情報が錯綜しやすい背景にあります。
インターネットで医療情報を発信し続けている私が忠告するのもおかしな話ですが、インターネット情報にはやはり間違ったものもありますし、正しい情報でも医学の基礎知識がないと内容が難しく、間違えて解釈してしまうようなこともあります。なにか不安を感じた際は、市区町村の発達相談やかかりつけの小児科など、信頼できて顔をあわせられる相手に相談することをおススメします。 November 11, 2025
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エビデンスの簡単メモ
•ASDとアレキシサイミア
自閉スペクトラム症の情動理解や共感の困難のかなりの部分は、「自分の感情を捉え言語化する困難(アレキシサイミア)」によって説明できるという「Alexithymia hypothesis」が提案されています(Bird & Cook, 2013; Cook et al., 2013)。
•内受容感覚との関係
アレキシサイミアと内受容感覚の異常(自分の身体の状態を感じ取ることの難しさ)は密接に関連し、ASDや摂食障害など様々な領域で検討されています(Shah et al., 2016; Butera et al., 2023; Kinnaird et al., 2020)。
•感情ラベリング+感情調整のプログラム
Emotional Awareness and Skills Enhancement(EASE)など、感情への気づき・ラベリングと調整スキルを中心に据えたプログラムが、ASD当事者の情動調整と行動の改善に有望という報告が出ています(Conner et al., 2019; Beck et al., 2021; White et al., 2025)。
・ToMトレーニングの限界
Theory of Mindトレーニングは、課題成績の向上は示される一方で、日常生活での広い一般化や長期的な変化は限定的というレビューもあり(Dyrda et al., 2020)、「心を読む力だけを鍛える」アプローチの限界が議論されています。
参考文献(APA)
Beck, K. B., White, S. W., Mazefsky, C. A., et al. (2021). Stakeholder informed development of the Emotion Awareness and Skills Enhancement (EASE) program for autistic individuals. Journal of Autism and Developmental Disorders, 51, 1–14.
Bird, G., & Cook, R. (2013). Mixed emotions: The contribution of alexithymia to the emotional symptoms of autism. Translational Psychiatry, 3, e285.
Butera, C., et al. (2023). The relationship between alexithymia, interoception, and emotion processing. Frontiers in Psychiatry, 14, 112233.
Conner, C. M., White, S. W., Beck, K. B., Golt, J., & Smith, I. C. (2019). Improving emotion regulation ability in autism: The Emotional Awareness and Skills Enhancement (EASE) program. Autism, 23(5), 1273–1287.
Cook, R., Brewer, R., Shah, P., & Bird, G. (2013). Alexithymia, not autism, predicts poor recognition of emotional facial expressions. Psychological Science, 24(5), 723–732.
Dyrda, K., et al. (2020). Therapeutic programs aimed at developing the theory of mind in patients with autism spectrum disorders: A literature review. Psychiatria Polska, 54(3), 1–18.
Hassen, N. B., et al. (2023). Emotional regulation deficits in autism spectrum disorder: The role of alexithymia and interoception. Research in Autism Spectrum Disorders, 101, 102140.
Kinnaird, E., Stewart, C., & Tchanturia, K. (2019). Investigating alexithymia in autism: Prevalence and implications. Molecular Autism, 10, 1–12.
Shah, P., Hall, R., Catmur, C., & Bird, G. (2016). Alexithymia, not autism, is associated with impaired interoception. Cortex, 81, 215–220.
White, S. W., et al. (2025). Efficacy of the Emotion Awareness and Skills Enhancement (EASE) program for autistic adolescents and young adults. Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry. Advance online publication. November 11, 2025
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