プラズマ トレンド
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2025.12.09 04:00
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ドイツ・ミュンヘンに拠点を置く核融合エネルギー企業Proxima Fusionは、2025年2月26日に、世界で初めて商用化を前提とした統合型核融合発電所コンセプト「Stellaris」を発表しました。
この設計は国際学術誌Fusion Engineering and Designに査読付き論文として掲載され、核融合研究の歴史に残る重要な一歩として世界中から大きな注目を集めています。
Stellarisの最も革新的な点は、現在の核融合プロジェクトの多くが採用しているトカマク方式ではなく、ステラレーター方式を基盤としていることです。
特に、準等動的(Quasi-Isodynamic:QI)配置と呼ばれる高度な磁場構造と、高温超伝導(HTS)磁石を組み合わせることで、プラズマを完全に外部の磁石だけで制御します。これにより、トカマクで避けられない突然のプラズマ崩壊(ディスラプション)がほぼ発生せず、真の連続運転が可能になります。
また、メルトダウンのリスクがなく、放射性廃棄物も従来の核分裂炉に比べて大幅に少なく、しかも短寿命であるため、極めて安全でクリーンなエネルギー源として期待されています。
このコンセプトは、ドイツのマックスプランクプラズマ物理学研究所(IPP)が総額13億ユーロ以上を投じて建設・運用している世界最先端のステラレーター研究装置Wendelstein 7-X(W7-X)の成果を直接継承しています。
W7-Xはすでに長時間プラズマ閉じ込めの世界記録を更新しており、その実証された技術とデータを基に、Proxima Fusionは計算機による最適化と最新のHTS磁石技術を活用して、従来のステラレーターよりもはるかにコンパクトで高出力密度の発電所を実現しました。
設計上の最大磁場強度は20テスラ級、プラズマβ値は約2.76%と、高性能を保ちつつ現実的な工学制約を満たしています。
Proxima Fusionは2023年にIPPの最初のスピンオフ企業として設立されてからわずか2年あまりで急成長を遂げ、2025年9月時点でSeries A資金調達を総額2億ユーロ(約300億円)以上に拡大しました。
これは欧州の民間核融合企業として過去最大級の投資額です。投資家には欧州イノベーション評議会基金をはじめとする著名なベンチャーキャピタルが名を連ね、チームは現在80名を超える規模に拡大しています。
共同創業者であるFrancesco Sciortino CEOやLucio Milanese COOをはじめ、メンバーにはIPP、MIT、Google X、Tesla、SpaceX出身のトップクラスの研究者・エンジニアが揃っています。
今後の開発ロードマップは非常に明確です。2027年には高温超伝導磁石の実証機「Stellarator Model Coil」を完成させ、2031年にはデモ機「Alpha」において連続運転によるネットエネルギー獲得(Q>1:出力が入力エネルギーを上回る状態)を実証する計画です。
そして2030年代には、Stellarisクラスの本格的な商用発電所を電力網に接続することを目指しています。
核融合エネルギーはこれまで「いつもあと30年先」と言われ続けてきました。
しかし、高温超伝導磁石の登場、AIを活用した設計最適化、計算機性能の飛躍的向上により、ついに現実的な商用化の段階へと大きく前進しています。
Proxima FusionのStellarisプロジェクトは、トカマクが主流の競争の中で、ステラレーターが「安定性と連続運転性」という決定的な優位性を持つことを世界に示す象徴的な取り組みです。
欧州がエネルギー安全保障と気候変動対策の切り札として核融合をリードする可能性を強く感じさせるこのプロジェクトは、地球規模でのクリーンで無限のエネルギー供給という人類共通の夢を、現実のものに近づける大きな希望となっています。 December 12, 2025
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