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ジェイムズ
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2025.12.10 15:00
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ジェイムズ・モロウ『ヒロシマめざしてのそのそと』(竹書房)は、第二次世界大戦終盤に差し掛かったアメリカにて、ハリウッドの着ぐるみ俳優に依頼された極秘の任務。あり得たかもしれないもう一つの計画を描いた小説でした。そしてそれこそが、原爆へのアンチテーゼになっている優れた反戦SF。#読了
ゴジラを彷彿させる火吹きトカゲ(笑)を倭国への戦争に投入する極秘のニッカポッカー・プロジェクトを立ち上げたアメリカ軍。このベヒモスと名付けられた火吹きトカゲは400メートルもあり、制御が難しい。そのため、ハリウッドのモンスターの着ぐるみの演技で高く評価されていたシムズに白羽の矢が立つ。彼は、プロジェクトで、倭国人外交団にベヒモスの破壊力を「ベヒモス」になりきってプレゼンするという役割を期待されていたのだった。
歴史にはifはないのだが、もしもあり得た物語としてこのモロウのプロジェクトが存在し、倭国が停戦協定を結んでいたら、原爆の投下もなかったのかもしれない。モロウは、想像力を持って「巨大火吹きカゲ」プロジェクトを立ち上げ、「マンハッタン・プロジェクト」に対抗する形で、大量虐殺兵器の危険性を提唱した物語でもある。ニッカポッカー・プロジェクトが結局実施されず、原爆がもたらした苦悩が、シムズのその後の人生に投影されていく。
読み終えて、しんみりとしてしまった。じわじわとボディ・ブローのように効いてくる、そんな渋みのある反戦SFだった。私は詳しくないのだが、1940年代ぐらいのハリウッドの怪奇映画や怪獣映画に精通しているとなお面白く読めるのではないかと思う(すごいB級ホラーや怪獣映画がたくさん出てくる)。 December 12, 2025
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