【物語シリーズ二十周年記念スピンオフ】 『どこに行っても泣く少女』 春の午後、警察署・刑事課執務室。 21歳になった井草真依は、 私服のまま、兄・井草悠真のデスクまで一直線に歩いてきた。 悠真が椅子から立ち上がる間もなく、 真依は全力で兄の胸に飛び込み、 「うわあああああああああーーーーーーーん！！」 制服の胸が一瞬で涙でびしょ濡れになる。 署内の空気が凍りつき、 電話の音も、キーボードの音も、 すべてが止まる。 阿良々木暦は、壁に背を預けたまま、 ただ静かに見つめている。 八九寺真宵（触れる浮遊霊）が、 真依のすぐ横に浮かび、 優しく、でも切なそうに呟く。 真宵 「まいまい……真依ちゃん泣かないでよ…… 　ここ、警察署だよ？　みんな見てるよ……」 暦（小さく） 「……真依ちゃん、もういい」 悠真は妹の背中を強く抱きしめながら、 震える声で、 「真依……俺がいるから……ずっとここにいるから……」 でも真依は止まらない。 真宵がついに声を張り上げる。 「まいまい、いい加減にして！！」 その瞬間、 真依の体がびくりと震え、 兄の胸に顔を埋めたまま、 世界が割れるほどの、 これまでで最も深い、 最も純粋な、 八九寺真宵の11歳の無念そのものの泣き声が、 警察署を、町を、空を、地球を、宇宙を貫いた。 うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん November 11, 2025

@mns_me24 アニメも面白いですよ☺️！
私は八九寺真宵ちゃん推しです🐌
是非観てください〜🥳

まじそれ！よしリスで階段下行きたい😎 November 11, 2025

【物語シリーズ20周年スピンオフ】 『どこに行ってもなく少女』 5月13日。 八九寺真宵が死んだ日から数えきれない命日。 井草家のリビング。 大学三年生になったばかりの井草真依（21）は、 兄・悠真の古いジーパンに白いＴシャツという私服姿で立ち尽くしている。 赤い瞳、八重歯、長髪を緑のヘアゴムで縛ったまま。 生まれつき、化物語開始の十一年前の交通事故死の“遺伝子”を抱えて生まれた。 迷い牛であり蝸牛である怪異。 牛の形などどこにもない。ただ泣くだけの、八九寺真宵の無念そのもの。 真依は崩れ落ちるように、 触れる浮遊霊の八九寺真宵に、 一生分の後悔を込めて抱きついた。 「うわあああああああああーーーーーーーん」 それは、 十一年前、11歳の真宵が最後に上げたであろう、 「ママ……！」という届かなかった叫び。 信号無視の小型トラックに跳ねられ、 小さな体が十メートル以上吹き飛ばされ、 頭蓋骨が砕け、アスファルトに血と脳漿を撒き散らし、 母に会うことも、成人式も、恋も、結婚も、子どもを抱くことも、 老いることも、すべてを永遠に奪われた瞬間、 その痛みと絶望と、 「どうして私だったの」という問いが、 真依の喉から、魂ごと引き裂かれて噴き出す。 暦、ひたぎ、火憐、月火、悠真、牛歩を抱く悠真、 真宵の両親の霊―― 全員が、ただ見守る。 真宵 「まいまい……真依ちゃん、泣かないでよ……私が命日に泣かれるなんて……」 真宵の両親の霊が、静かに微笑む。 夕方。 駅周辺は人で埋め尽くされた。 阿良々木暦、戦場ヶ原ひたぎ、羽川翼、千石撫子、神原駿河、斧乃木余接、火憐、月火、 小学生、中学生、高校生、大学生、教師、町の人々―― 誰も一言も発さず、ただ立ち尽くす。 信号は止まり、車は止まり、電車は止まり、 世界は止まった。 八九寺家の廃屋は花束の山。 事故現場の銅像は花で埋もれている。 墓石すら撤去され、土に返された八九寺家の墓跡地にも、花が絶えない。 真依の泣き声は、 八九寺真宵とその両親の未来を、 八九寺家という存在そのものを、 永遠に奪った罪、 怪異の心臓部である真宵の幽霊が支配し続ける無念、 すべてを背負って、 全世界を貫き続ける。 真依は、 一生、 どこに行っても泣き続ける赤ちゃんのまま、 真宵の代わりに、 永遠に、 うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん November 11, 2025