間違えられた男 映画
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2025.11.27 16:00
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❶ 間違えられた男にほぼ間違えられた男
カルテットだったか ベース弾きの男 ピアノ弾きでもよかった 寒い夜 ハット コート姿の男であり 仕事終えて地下鉄 人少ない駅 降りてからカフェへ カウンター越しに挨拶があり 珈琲を銅貨で払う 新聞を読み 帰宅 玄関の階段に置かれたミルクの瓶を手に持ち ミルクは飲まない 飲んでみてもよかった 眠る子供二人に目線 ドアの隙間から入り妻にキス 眠りは夜を抱え 重くて 軽くなるにつれ
妻の痛む歯の治療のために 胃でもよかった 保険会社に行き 銀行でもよかった 借金 窓口の女が怯える 女三人でこわごわ話す 通報 警察がベース弾きの男を連行であり 三つの店に連れていき 三人の店主の面通し 犯人の筆跡と同じであり 類似 取り調べ 帰りの遅い夫を心配であり 六人の男を並べ保険の女三人に面通し 一人の男を選ぶ 口を揃えて間違いない 証言の確実であり 強盗に間違えられた男 さっそく指紋とられる 高さのあるカウンター越しに書類提出 すみやかに受理 男の所持品没収が 没収の記録が お金はわずかであり ベースは重いから持ち歩かない ライターは軽い 十字架は軽い 新聞は軽い ネクタイ没収 首を絞めないように 拘留が ハット コート着たまま留置所が 目が回る 回らなくてもよかった 妻へ電話もできない なにもしてないのに 『間違えられた男』に類似 間違えられた男に間違えられた 義弟が逮捕情報を収集する 義弟でなくてもよかった 妻の廊下で 廊下でなくてもよかった 義弟は 逮捕され容疑者 と伝える 強盗 と耳に入る子供たち ドア越しの目 耳や目は要らなかった 沈黙 妻の沈黙
夜明け 警察がネクタイを男に返す ネクタイを締める 締めなくてもよかった 外へ 護送車に乗せられて 橋を渡って 容疑者の写真撮影であり 護送車に容疑者増え 容疑者と容疑者が手錠で繋がれ そんなペアが五組 みな男であり 獄に着き 手錠を外され 個々に与えられた番号を言う 獄へ 独房へ
すぐに釈放される 義弟が保釈金を払う 迎えに来た妻と抱き合う 子供たちと抱き合う
身の潔白を証明するために弁護士事務所へ 夫婦で 妻が饒舌に説明する 夫は無実です 信じています 真犯人は別にいます 間違えられた男です 三つの店の三人の店主 保険の三人の女 六人の証言はみな嘘です みんな間違えているのです みんなではなかったかもしれない 六人だったか 八人だったか 間違えられた男にほぼ間違えられたのです 真犯人は見えていません 真犯人は男です わかってください 様々な設定の踏襲であり 類似の盲点であり 類似だから誤差はあります 誤差の顔だったのです 類似に埋没する潔白の証明のために 力を貸してください お願いします
無実の証拠への 真の 新たな証人探しの 線上に三人の証人浮かぶ 追い求める 一人は病死であり 一人は謎の失踪であり 一人は事故死であり スペイン語だったか 失踪を語る人からの 謎の失踪の行方に注目 唯一の生存かもしれないに注目 無実の証人を確保するために スペイン語を吸って 引き寄せて 追ってはみたが 謎に無力であり 謎に脱力であり 謎に絶望
再度 弁護士事務所へ 夫は切願する 妻無言であり 表情の欠落であり 問いへの返答が 遅れて口が 目が宙に浮いていて 夫の退出に気づかず 妻の背後を見つめる夫と弁護士であり 夢遊病者の妻の足取りに 地雨
❷に続く
Firenze November 11, 2025
❷ 間違えられた男にほぼ間違えられた男
保釈の期限内で ベース弾きの仕事を終えて ミルクの瓶を持って帰宅 眠る子供たち 妻は暗闇の椅子に腰かけ 黒い服を着て 黒でなくてもよかった 眠れないと呟く 肩を抱こうとする夫から反射的に飛びのき 怯えが 震えが 怒りの加速が 暴走であり 泣き笑いであり 慟哭 叫び 夫が近づく 妻の手に固いブラシが 棒でもよかった 夫の額を打つ 傷口が 赤く 垂れ ミラー割れる 無言の夫が 動かない夫が 鎮まる妻であり 距離を縮め 夫の頬に自分の頬を寄せる妻の
カウンセリング 医師は妻のサナトリウム行きを告げる 夫の車に乗せて 妻は乗せられて 逆らわずサナトリウムの奥へ 奥まったその奥へ サナトリウムの外は広い庭であり ゆっくりと歩く人々の 木々の 草の 風の 匂いが 湖の見える丘であり 下っていく間違えられた男であり 間違えられた男にほぼ間違えられた男であり 一人になり
裁判 検事対弁護士 保険の女三人の 三人の店主の証人尋問 六人なのか 時間がかかる 三人か 十人か 数が茫漠として 目が 耳が 尖って 溶けて 法廷に人が多い 息ができない 陪審員たちの無言が 男の母の涙が 判決を待つあいだに
雑貨店 夜 ハット コート姿の男 コートのポケットに手を突っ込み ピストル所持のかたち 金を出せ 店の肥えた女 ナイフを手に 床を強く踏む音響き 店の奥から女の亭主の細身の店主が 男を背後から羽交い絞めであり 女は警察に通報する 逮捕 間違えられた男の類似であり 真犯人であり 保険の女三人の面通し 三人の店主の面通し 真犯人に間違いありません 間違えられた男にほぼ間違えられた男の無実の判明であり 晴れて
警察の廊下で 真犯人の男と間違えられた男にほぼ間違えられた男の対面であり 無言のすれ違いであり ハットとハットの類似であり コートとコートの類似であり 骨張った顔と骨張った顔の類似のすれ違い 真犯人の無言に 無言ではなかったかもしれない 間違えられた男にほぼ間違えられた男がなにかメッセージを発し わずかに廊下が揺れ すれ違う
真犯人の間諜の顔が 何重もの顔が 変装に次ぐ変装であり 間違えられた男に変装であり 類似であり 職務を離れて強盗 誤認逮捕のあいだに逃走 結果敵を欺き 身を隠し 身を現し まぬけな逮捕による暴露であり 正体が取り調べ 調書 裁判 判決に至るあいだに正体は 円弧 曲がっていく 正体は見えるのか 見えないのか 元の顔が 現れる 元の顔が元でなかったとしても だれかの顔であり 類似の
間違えられた男にほぼ間違えられた男は妻を迎えにサナトリウムを訪れる 無言の妻に真実の解明を伝える 無実が 無言に溶けていく 時間がかかる ゆっくりと回復するまで 無罪であり 春のやわらかな日差し
#詩 339/2025.11.26/X
✳️この詩、最後まで読むのは忍耐要るかも、でも、この詩の《二重性》の更なる《ほぼ二重性》の、《大まかな四重性》は残しておきたい試み
❶❷に分離したのは1ポストだと文字オーバーで。空白入れて計2800字ぐらい。5000字まで入るはずなのに何故?
Firenze November 11, 2025
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