財務諸表
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2025.12.02 03:00
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商品を掛けで仕入れたとき、どの勘定科目を使いますか?
簿記検定の勉強をした人なら、即答できるはずです。「仕入/買掛金」ですよね。教科書にもそう書いてあるし、問題集でも何度も練習したはずです。
でも、実務の現場に入ると驚くことがあります。「仕入/未払金」という仕訳を使っている会社が、普通にあるんです。
今日は、簿記の教科書と実務のギャップとして、意外と知られていない「買掛金と未払金の使い分け」について話します。
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簿記検定での明確なルール
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簿記検定では、買掛金と未払金の区別は超重要です。
買掛金:商品の仕入れによる代金の未払い
未払金:商品以外の購入による代金の未払い
この区別を間違えたら、確実に減点です。だから受験生は「商品なら買掛金、それ以外なら未払金」と、しっかり覚えます。
理屈も明快です。買掛金は営業活動の中心である商品仕入れに関する債務だから、未払金とは区別して管理する必要がある。財務諸表を見る人にとっても、買掛金の金額は重要な情報になる。
完璧な説明です。異論の余地がありません。
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実務では「全部未払金」の会社もある
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ところが実務に入ると、この原則が通用しない会社があります。
商品の仕入れも、備品の購入も、経費の支払いも、全部「未払金」で処理している会社。買掛金という勘定科目をほとんど使わない会社。
こういう会社、実は少なくないんです。
僕が以前いた会社もそうでした。仕入伝票を入力するとき、相手勘定は自動的に「未払金」が入力されていました。先輩も上司も、誰も疑問に思っていませんでした。
簿記を勉強したばかりの人が配属されると、「あれ?教科書と違う…」って戸惑います。でも、「うちはこのやり方だから」で終わり。それが実務です。
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なぜ買掛金を使わないのか
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買掛金を使わずに全部未払金で処理する会社には、それなりの理由があります。
一番多いのは「管理のシンプル化」です。
掛けで購入したものを「これは商品だから買掛金」「これは備品だから未払金」と毎回判断するのは、地味に面倒です。特に、商品と備品の境界があいまいな業種だと、判断に迷います。
それなら「掛けの支払いは全部未払金」と決めてしまった方が、入力する人も迷わないし、チェックする人も楽。補助科目や管理表で支払先を管理すれば、実務上は困りません。
もう一つの理由は「業種による必要性の違い」です。
小売業や卸売業など、商品仕入れが主要な取引の会社では、買掛金の金額が経営上の重要指標になります。だから買掛金を明確に管理する意味があります。
でも、サービス業や一部の製造業では、商品仕入れの比重が小さい。そういう会社では「わざわざ買掛金を分ける必要性を感じない」となります。
僕が入社した会社は、建設業だったので、資材・部品・加工費が混在する場合が多く、実態として買掛金と未払金を分けても意味が薄いと判断していました。
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監査や税務では問題ないのか
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ここで気になるのは、「教科書と違う処理をして大丈夫なのか」という点です。
結論から言うと、実は問題ありません。
その根拠が「経理自由の原則」です。
経理自由の原則とは、企業が自社の実情に応じて、会計基準や税法に反しない範囲で会計処理や記帳方法を選択できるという原則です。
だから、最終的な財務諸表が正しければ、どの勘定科目を使うかは会社の裁量で決められるんです。これが経理自由の原則です。
ただし、上場企業などでは話が変わります。監査法人から「買掛金は明確に区分してください」と指導されることが多いです。財務諸表の注記で買掛金の内訳を開示する必要があったり、より厳密な管理が求められたりするからです。
中小企業の場合は、顧問税理士と相談して決めます。「うちは未払金で統一します」と方針を決めて、それを一貫していれば問題ありません。
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どっちが正しいわけでもない
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じゃあ、簿記検定が教えていることは間違っているのか?
いいえ、簿記検定は正しいです。
簿記は「会計の原理原則」を学ぶものです。基本をしっかり理解するために、明確なルールで教える必要があります。買掛金と未払金を区別する原則を知ることは、会計を理解する上で重要です。
でも実務は「その会社にとって最適な方法を選ぶ」場です。原則を知った上で、規模や業種、管理体制に合わせて運用を決める。それが実務の柔軟性です。
僕自身は簿記を教える立場なので、受講生には教科書通りの区別をしっかり教えます。でも同時に、「実務では会社によって違うから、入社したら必ず確認してね」とも伝えています。
原則を知っているからこそ、実務の柔軟性を理解できる。両方知っていることが大切なんです。
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入社したらまず確認すべきこと
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これから経理の仕事を始める人へのアドバイスです。
入社したら、自分の会社がどのルールで動いているかを、まず確認してください。
具体的には、
✅商品の仕入れは買掛金を使うのか、未払金なのか
✅消耗品や備品の購入はどの科目を使うのか
✅勘定科目の使い方マニュアルはあるのか
これを確認せずに「簿記で習った通り」で処理すると、後で訂正の手間が発生します。
「御社の勘定科目の使い方を教えてください」と聞ける人は、「ちゃんと理解しようとしているな」と評価されます。
教科書と実務が違うから簿記なんて無駄みたいな極論をおっしゃる方がXにはいますが、教科書がわかるから実務で頭を柔らかくして対応できると僕は思います。
受験生の皆さんはまずは簿記検定でしっかり原理原則を積み上げ、原理原則がわかっているからこそ、その会社にあった提案ができる人になってください。
僕も微力ながら頑張っているあなたを応援します。
教科書には載ってない実務について今後も発信していきますので息抜きに見て行ってくださいね。 December 12, 2025
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