#紅エトセトラ 💋197
口紅が登場する小説、皆さんは何を思い浮かべますか？今日は倭国画家・上村松園の波乱万丈の生涯をモデルにした宮尾登美子作『序の舞』をご紹介します。旧態依然とした男社会だった倭国画壇で研鑽を積む主人公・島村津也（つや）は、二人の男性から口紅を贈られます。↓
妻帯者の恩師からは玉虫色の小町紅を。父親ほども年の離れた恩師に関係を迫られ、津也は身ごもります。洋行帰りの兄弟子からはリップスティックを。ヨーロッパで見つけたリップスティックは、小町紅と違って多色展開。「色がぎょうさんあってなぁ、あんたに似合う色捜すのにわし頭ひねったんやで」と口説かれます‥。

令和の倫理観に慣れた身には少々ヘヴィーな作品ですが、口紅一つで男たちの世代や性格、津也との関係性の違いまでも描き分けられていて、化粧史とうまく重ねたものだなぁと唸らされます。

松園の随筆『青眉抄』に登場する幼少期のエピソードも参照されているので、常設展示室ルーム１で紹介している明治期の京都・四条の紅屋「紅平」の賑わいがリアルに感じられますよ。

#紅ミュージアム　#化粧史 December 12, 2025