米空軍 トレンド
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2025.12.01 10:00
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「試着開発」という、ぼくたちの挑戦。AIによるビジネスの大変革期を迎え、それが何を意味するのか。
「スクラム開発」と呼ばれるスキームが、昔からある。
このスクラムの思想的ルーツを辿りながら、ぼくたちが取り組む「試着開発」がなぜ生まれ、どこへ向かおうとしているのかを語りたい。
■ スクラムは「倭国の工場」から生まれた
ソフトウェア開発の世界で「スクラム」といえば、アジャイル開発の代名詞。しかし、その源流が倭国の製造業研究にあることは、意外と知られていない。
1986年、ハーバード・ビジネス・レビューに一本の論文が掲載された。「The New New Product Development Game(新たな新製品開発競争)」。著者は野中郁次郎氏と竹内弘高氏。ホンダ、富士ゼロックス、3Mなど、当時の革新的企業を徹底分析し、彼らに共通する開発スタイルを「スクラム」と名付けた。
ラグビーのスクラムのように、チーム全員がボールを奪い合いながら前進する——そんな「全員参加・同時並行」の開発プロセスが、リレー形式で工程を順番に回すやり方より遥かに速く、イノベーティブだったのだ。
この論文に衝撃を受けたのが、元米空軍パイロットのジェフ・サザーランド。1993年にEasel社で最初のスクラムを実践し、1995年にケン・シュウェイバーとともに国際学会OOPSLAで発表。現在世界中で使われる「スクラム」というフレームワークを体系化した。倭国の製造業の知恵が、アメリカのソフトウェア産業で花開いたのである。
■ なぜ受託開発でアジャイルは難しいのか
スクラムは素晴らしい。だが、倭国の受託開発の現場では、なかなか根付かない。
従来のウォーターフォール開発は、最初に全ての仕様を決め、工程を順番に進める。「滝のように上から下へ流れる」からウォーターフォール。計画どおりに進めば品質は安定するが、途中で仕様変更があると上流まで遡ってやり直し。コストと時間が膨らむ。
アジャイル/スクラムはその弱点を補う。変化を前提に、小さく作って素早くフィードバックを得る。理想的に思える。
しかし、受託開発には構造的な壁がある。請負契約では「完成品の納品」が義務。仕様変更が当たり前のアジャイルとは相性が悪い。発注者と受注者の間に「契約」という境界線がある限り、真の意味での「一体となった開発チーム」は成立しにくい。
また、スクラムにはプロダクトオーナー(PO)——ビジネスの意思決定者がチームに常駐する——という前提がある。自社開発ならできる。だが受託開発では、発注者側にPOを立ててもらうこと自体が高いハードルになる。
■「試着開発」という解——デモプレイから始まる改善サイクル
ぼくたちは、この構造的課題に対して「試着開発」という答えを出した。
服を買うとき、試着室で実際に着てみる。サイズ感、シルエット、自分に似合うかどうか。カタログのスペックだけでは分からないことが、袖を通した瞬間に分かる。ソフトウェアも同じ。動くものに触れて初めて「これは違う」「ここをこうしたい」が見えてくる。
試着開発の核心は、POによるデモプレイから始まる改善サイクルにある。ぼくたちが提供するのは、ただのシステムではない。発注者自身がPOとして「試着」し、フィードバックを返し、それを即座に反映する。このサイクルを高速で回す。
「それ、普通のアジャイルと何が違うの?」
違いは、これを可能にする「裏側の仕組み」にある。
■ カスタムAIと独自コード設計が支える「持続的拡張性」
試着開発が成立するのは、カスタムAIと独自のコード設計があるからだ。
AIを開発に取り入れる企業は増えている。だが多くは「一度作って終わり」。最初のリリースは速くても、その後の改修や拡張で手が止まる。コードがAI任せのブラックボックスになり、人間が手を入れられなくなる。
ぼくたちは違うアプローチを取る。AIの力を活用しつつも、コードの設計思想は人間がコントロールする。拡張を前提としたアーキテクチャ。変更に強いモジュール構造。これがあるから、POからのフィードバックを素早く反映でき、「試着→改善→試着」のサイクルが回る。
「単発のAI開発」ではなく、「持続的に拡張可能なAI開発」。これが試着開発の本質だ。
■ スクラムの思想を受託開発に「注入」する
野中郁次郎氏は、スクラムの本質を「知識創造プロセス」と呼んだ。暗黙知を形式知に変え、チーム全体で共有し、また新たな暗黙知を生み出す。このスパイラルがイノベーションを生む。
試着開発は、この知識創造のサイクルを受託開発に持ち込む試みでもある。発注者の頭の中にある「こうしたい」という暗黙知を、デモプレイを通じて引き出す。それを形にし、また試着してもらう。発注者と開発者の間で知識が循環し、プロダクトが進化していく。
従来の受託開発は、発注者が「仕様書」という形式知を渡し、開発者がそれを実装する一方通行だった。試着開発は、その関係を双方向に変える。
■ イノベーションの裏方として
ドラマの主人公は役者。でも、見えない舞台装置がなければ物語は成立しない。
ぼくたちは、倭国のデジタルイノベーションの裏方でありたい。主役は、新しい事業に挑む経営者やリーダーたち。彼らが「試着」を繰り返しながら、自分たちのプロダクトを磨き上げていく。その過程を、テクノロジーとプロセスの両面から支える。
スクラムは倭国から生まれ、世界に広がった。今度は、その思想を倭国の受託開発に注入し直す番だ。小さく始めて、素早く改善する。カスタムAIと独自設計で、持続的に拡張する。
試着開発は、単なるAI開発を超えた、プロダクトと組織を同時に進化させる方法論。倭国発の知恵を、倭国のビジネスに還元する。
それがぼくたちの挑戦だ。 December 12, 2025
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