市原悦子 芸能人
0post
2025.12.05 03:00
:0% :0% (60代/女性)
人気のポスト ※表示されているRP数は特定時点のものです
#まんが倭国昔ばなしホラー回
『キジも鳴かずば』
________
むかしむかし、犀川という川のほとりに小さな村があった
毎年秋、雨の季節になると川が氾濫して多くの家や人が流されるので、みんな大層困っていた
👇
そんな村に、弥平という父親と千代という小さい娘が暮らしていた
弥平が外に働きにいっている間、千代は家の外で大好きな手毬をしながら歌を歌って待っているのが常だった
千代の母親は先の洪水で亡くなってしまっていた
2人の暮らしはかなり貧しかったが、それでも慎ましく幸せに日々を送っていた
👇
次の雨の季節がやってきた頃、千代は重い病にかかる
本当は医者に連れていってやりたかったがそんな金はないので、弥平は家で必死に看病していた
だが病いはどんどん悪くなる一方で千代の命は明日をも知れぬ状態だった
👇
「おっとぅ、、」千代は病床で弥平に声をかけた
「あずきまんまが食べたいな、、」
それはかつてたった一度だけ母親と三人で食べた千代が知るこの世で一番のごちそうだった
金のない弥平は返す言葉がなくうなだれるしかなかった
👇
その夜、雨の降りしきるひとけのない村を走る弥平がいた
「、、、地主様の蔵にはあずきがある、、」
👇
大屋敷の蔵に忍び込んだ弥平は震える手でひと掬いのあずきを袋に入れた
それはたった一度犯してしまった盗みだった
👇
そして何とか家に戻ると鍋に火をかけてあずきを入れる
「千代や、あずきまんまだよ お食べ」
弥平に食べさせてもらうと千代は一粒のあずきを噛み締める
「、、、あずきまんま、おいしいなぁ」
「そうかそうか、よかったよかった」
👇
あくる日、地主の屋敷ではあずきが少量盗まれていることがすぐにわかった
大した被害ではないが一応番所に届出をする
👇
それから何日経ち、あずきまんまと弥平の看病の甲斐があってか、重かった千代の病は日毎に良くなっていき、起き上がれるまでに回復した
👇
「まだ布団から出ずに寝ているんだよ」
次の日、弥平は仕事に行く時に千代に声をかけて出ていった
「はーい」
と言ったものの、身体の調子が良くなってきた千代はじっとしておれず家の外に出た
👇
「と~んと~んと~~ん♪
おいしいおいしいまんま食べた~♪
あずきの入ったまんま食べた~♪
と~んと~んと~~ん♪」
大好きな手毬唄をうたって遊ぶ千代。
それをすぐそばの畑で農作業をしていた村人が聞いていた
👇
それから2日ほど経って、しばらく穏やかになっていた天気だったがまた雨足が強くなってきた
犀川の水かさはどんどん増し、今にも氾濫しそうだった
今年も被害に遭ってしまうのか、、、村人たちは不安な面持ちで川を見ていた
👇
そんな中、何人かで村長の家で話し合いが行われた
「、、、、、、やはりここは人柱を建てるしかないのかのぅ、、、」
『人柱』とは、生きたまま人を土に埋めて神様に捧げる恐ろしい因習だった
👇
人柱になるのは、何か悪いことをした咎人が一般的だったので、そんな者はいないか?と村長がみんなに聞いたところ、
「実は、、、、、、」
声を上げたのは弥平の家の近所の者だった
👇
その夜、弥平の家の戸を番所の役人が叩いた
「弥平!先日地主の蔵からあずきを盗んだだろう!
娘の千代が手毬唄であずきを食べたことを歌っていたぞ!観念しろ」
👇
身を寄せ合って震える弥平と千代だったが、
「、、、おっとぅはじきに帰るから、おとなしゅうして待ってるんだよ」
千代の頭を優しくなでると弥平はお縄につき、役人たちと去っていった
「おっとぅ、、、、おっとぅ、、、、!」
千代は雨の降りしきる家の外で泣き崩れるしかなかった
👇
弥平はそのまま帰ってくることはなかった
犀川の氾濫を食い止めるために人柱として埋められてしまったからだ
👇
それから人柱の効果があったからなのか、雨をおさまっていき、その年、犀川が氾濫することはなかった
👇
泣き暮らす千代だったが、村の人に千代があずきまんまを食べた手毬唄を歌っていたことから弥平の盗みが発覚したことを聞かされる
👇
千代の泣き声は村人たちの心に突き刺さり、何日も何日も村中に響き渡った
👇
ひとしきり泣き続けると、千代はぴたりと泣き止み、それ以来言葉を一切発さなくなる
それから何年か経ち、千代の姿はどこかに消えてしまう
👇
そしてある年、猟師がキジを撃ちに山に入っていた
「ぴぃーーーー」
大きく鳴いて飛び立つキジに狙いを定めて猟師は鉄砲を撃ち込めた
👇
落ちた獲物を取りにすすきの原をかき分けると、そこにはキジを抱える成長した千代が立っていた
「キジよ、おまえも鳴きさえしなければ撃たれずにすんだものを、、」
ボソリと呟く千代に「、、、しゃべれるようになったのか、、、、」と驚く猟師
千代はキジを抱えたまますすきの荒野に消えていった
👇
それから千代の姿を見た者は誰もいなかった
ただ、千代の発した後悔の念に駆られたような重い言葉は、村人たちの間でいつまでもいつまでも悲しみを込めて語り継がれたという事だ、、、、、
おわり
______
ただただやるせない話、、、、、
柔らかいタッチの絵柄からは想像できないような重い展開
常田富士男さんの優しい弥平の声と、市原悦子さんの千代の父親を想う泣き声が心に残り続ける、、、、
派手さはないが、この話もまんが倭国昔ばなしの名作の一つとして印象深い、、、、 December 12, 2025
4RP
<ポストの表示について>
本サイトではXの利用規約に沿ってポストを表示させていただいております。ポストの非表示を希望される方はこちらのお問い合わせフォームまでご連絡下さい。こちらのデータはAPIでも販売しております。



