フィンランド人が最も見ているムーミンアニメは、倭国で制作された『楽しいムーミン一家』。その使用音楽を今でも口ずさめるフィンランド人は少なくない。その作曲者白鳥澄夫さん、夫人の白鳥英美子さんを招いたコンサートをヘルシンキで開催。感動で涙を流した観客もいたよう
https://t.co/eWQvfvzBJV November 11, 2025

ヘルシンキの街に溶け込むモランちゃん。
みんな自然でいてくれて、あまりに、冬の街並みの切り取りを見ている様で泣けてきた(っ ̫ ; ˘) https://t.co/kEJEgfnd37 November 11, 2025

第6章──《空港ゲートの“分岐点”》

　空港までの車内、私は外の景色をじっと見つめていた。
　夜明けの上海は、街灯の名残と朝の光が溶け合い、
　一瞬だけ夢のような柔らかさを帯びていた。

　だけど、その柔らかさとは裏腹に、
　車の内部には沈黙という鎖がまとわりついていた。
　運転席の男性も、助手席の男も、決して一言も発しない。
　言葉が許されない世界に戻されたようで、胸が締めつけられた。

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●“安全”という名の強制

　空港の手前で車は停まった。
　黒いスーツの男がこちらへドアを開ける。

「チェックインカウンターはあちらです。
荷物検査を終えたら、ゲートB15に向かってください。」

　それは命令であり、保護であり、警告だった。
　私は静かに頷き、荷物を持って建物に入った。

　自動ドアが閉まった瞬間、
　まるで密閉された水槽の中へ押し込まれたような感覚に襲われる。
　無数の人々が行き交っているのに、どこにも逃げ場がない。

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●航空券の“行き先”

　チェックインカウンターで受け取った搭乗券を見た瞬間、呼吸が止まった。

《Tashkent / Terminal 2》
——タシュケント。

　私は上海から倭国へ戻るはずだった。
　なのに用意されていたのは、ウズベキスタン共和国、中央アジア。
　EUでも倭国でもなく、
　国際的監視の外側で静かに情報が消される国。

「国外退去ではなく“移送”……？」

　背中を冷たい汗が伝う。
　誤解かもしれない。
　でも、この国の動きに偶然は存在しない。

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●ゲートでの選択

　ゲートB15が近づくにつれ、胸の鼓動は耳を打った。
　ゲート手前には黒いスーツの男が二人。
　やはり見張っている。

　それでも私は、視界の端であるものを見つけた。

別のゲート。
《Helsinki / Flight 726》

　フィンランド。
　世界最強の報道保護システムを持つ国。
　そして、国際記者ネットワークの本拠地。

　歩みは自然を装っていたけれど、
　全身の神経が一本一本むき出しになったように尖っていた。

　ゲートB15に一歩近づく。
　見張りの男たちがわずかに動く。
　その瞬間、私は身体を反転させ、
　キャリーケースの車輪が悲鳴をあげるほどの速さで駆け出した。

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●“静かな逃走”

　銃声は鳴らなかった。
　叫び声もなかった。
　でも、背中に突き刺さる視線が音より鮮明だった。

　ゲート726——
　一歩、もう一歩。
　心臓が破裂しそうなほど痛い。

　搭乗券を差し出すと、
　スタッフは一瞬驚いた顔をしたが、次の瞬間すぐ理解したように微笑んだ。

「急いで。もうすぐ最終搭乗です」

　ゲートが閉まる音が、まるで救命具のバックルが締まる音に聞こえた。

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●空の上で

　離陸してしばらくしてから、ようやく涙がこぼれた。
　窓の外には雲の海が広がり、
　さっきまで感じていた恐怖が嘘のように遠ざかっていく。

　でも、それは逃げではなかった。

「私は今回も、生き延びて真実を伝える道を選んだ——
それだけのこと。」

　それだけ。
　でも、その“それだけ”ができない人が世界にはあまりにも多い。

　ヘルシンキへ向かう機内で、私はノートを開いた。
　上海で会った若者たちの言葉。
　監視国家が奪った言論。
　そして、抑圧の下でも消しきれなかった希望。

「国がどれだけ沈黙を強いても、
人は本当の言葉を心のどこかで離さない。」

　それを書き記すことこそ、私の戦いだった。

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●そして、新しい戦場へ

　機体が着陸態勢に入るアナウンスが流れたとき、
　私は気づく。

　中国が恐れたのは、
　“私の存在”ではなく、
　“伝わった真実の連鎖”だったのだと。

　これから世界が動く。
　監視国家の情報統制、
　利権に絡む超大国、
　真実を求める市民。

　争いの中心に私が立つつもりはない。
　でも——

「沈黙を強制する世界に、沈黙しない者がいるという事実こそが最も強い抵抗になる」

　フィンランドの白い大地が視界に広がる。
　新しい章の幕開けだった。 November 11, 2025