昨日のブーニンのリサイタルに関して一言。最近、各所で話題の聴衆のマナーについてである。昨日の会場では、演奏中の鈴の音や諸々の雑音などもかなり酷かったが、何よりビックリさせられたのは演奏終了後、間髪を入れずに発せられた「蛮声」である。プログラム最後のメンデルスゾーンの音が鳴り終わると同時に（まだブーニンは腕を下ろしていない）、「ワオー！」というような若い男性による強烈な叫び声が響き渡ったのだ（ワオー！ではなくハラショー！だったという説があるが、よくわからない）。アンコール最後のバッハの終了時も同じだ。今度も一瞬の間もなく容赦ない「ブラボー！」が放たれた（また同じ人の声だ）。いずれにおいても、演奏の余韻も何もあったものではなかった。
私は、両曲ともに、ブーニンによる万感を籠めた演奏であったと思うのだ。もとより歓声を呼ぶような派手な終わり方をする曲ではない。私自身は、ブーニンの過去と現在に思いを至しつつ、演奏の余韻を噛み締める時間が欲しかったが、それは叶わなかったのだった。
昨日、蛮声を発した男性の方がこのポストをもしご覧であれば、申し上げておく。あれはダメだ。熱心な音楽の聴き手にとって迷惑以外の何ものでもない。ブーニンに対しても、演奏者自身が演奏の余韻を噛み締める機会を奪っており、失礼極まりないと思う。ブーニンを応援したい気持ちかとは思うが、それは典型的な「贔屓の引き倒し」だと申し上げておく。
最近のピアノ•リサイタルでは、演奏終了後、ピアニストが腕を下ろして立ち上がって初めて拍手が起こるのが普通になっていたと思う。昨日の「蛮声君」はあまりピアノ•リサイタルは聴かないのだろうか。万一にも、他のリサイタル、演奏会で同じことをして、演奏会をぶち壊すことのないように、くれぐれもお願いする次第である。 December 12, 2025