トルフィン トレンド
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2025.12.09 23:00
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創作という営みを、しばしば人は「物語を作り出す技術」だと考える。だがそれは、本質から少し外れている。創作とは、他でもない自分自身と向き合うことであり、自分の内側に潜むあらゆる声と時に苛烈なまでに交渉を続けることなのだ。
先日、『ヴィンランド・サガ』の作者・幸村誠さんと対話する機会を得た。彼の創作論に触れたとき、僕はあらためてその事実を痛感した。
幸村さんは、キャラクターを自らの脳内に召喚し、「議会」を開くという。議長を務める幸村さんは、登場人物一人ひとりの意見を聞き、全員が納得するまで執筆を始めない。狂気と誠実さが奇妙に同居した、創作者の極北のような作法である。
興味深いのは、彼が「主人公に近い自分」だけを描いているのではない点だ。彼は、トルフィンという理想を投影できる人物と同じだけ、イーヴァルという「嫌悪すべき自分」の一部もまた、正面から物語に据える。それは、自分の醜さを切り捨てずに凝視する覚悟を意味している。
創作者というのは、どうしても自分を良く見せたくなる。「立派な思想」や「正しさ」を、キャラクターの口を借りて語りたくなる。しかし、そこには必ず嘘が混ざる。悪役を「悪」として処理し、倒してしまうのは容易だ。だがそのとき物語は、読者の魂に届くべき震えを失うだろう。
物語が生身の痛みを持つためには、嫌悪し、忌避し、封印してきた自分の闇にも血を通わせなければならない。僕たちはそのとき初めて、読者の痛みとつながることができる。
思い出すのは、『宇宙兄弟』の小山宙哉さんの言葉である。
「キャラと出会う感覚がある」
多くの人は、それを「キャラクターが勝手に動き出す現象」のように理解するだろう。だが、幸村さんの語りを踏まえるならば、それは自分でも気づいていなかった自分との遭遇のことなのだ。
創作とは、自分の中に潜む死角に、恐る恐る光を当てる行為である。見たくなかった自分と出会い、その声に耳を傾ける覚悟の旅である。
……と、ここまで偉そうに言語化してみたけれど、この長文投稿自体が、僕の中の「賢く見られたい、かっこいい自分」だけで構成されているという矛盾については、どうか目をつぶってほしい。
最後に、この学びの場を与えてくださった幸村誠さん、木村さん、ゲンロンカフェの皆さまに心から感謝したい。ありがとうございました。
幸村さんと対談の記念写真を撮り忘れてしまった。 December 12, 2025
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世の中の物語の多くは、「夢を成し遂げる」「復讐を果たす」、あるいは「恋を成就させる」までで終わる。
なぜなら、その先にある「リアリティのある生活」からドラマを掬い上げ、エンタメとして成立させるのは、作家にとってあまりに過酷で難しい作業だからだ。
僕自身、『宇宙兄弟』という作品に関わる中で、「夢を叶えた後の日常」を描き続けることの難易度を小山さんが感じているのを、ずっと見てきた。
だからこそ、一ファンでしかないけど、『ヴィンランド・サガ』が到達している領域には畏怖すら感じる。
ヴァイキングの物語と聞けば、僕たちはつい「力」と「征服」のイメージを思い浮かべる。しかしこの作品は、その中心に「戦わないこと」を選ぶ勇気を据えた特異な物語だ。
主人公トルフィンは幼少期に父を失い、復讐だけを支えに育つ。だが、その復讐心こそが彼を戦場に縛りつけ、人間性を殺していく。憎しみによって生きる者は、相手を否定することでしか自分を肯定できなくなる。そこにあるのは「戦う者の論理」への従属でしかない。
面白いのは、彼の人格を形成したアシェラッドという男が、暴力に最も精通しながら、最後の瞬間に暴力の物語を裏切る点だ。暴力の果てには虚無しかないことを、彼は知っていた。アシェラッドを失い、復讐の軸が消えたとき、トルフィンは再び考え始める。「人は何のために生きるのか」と。
父トールズの言葉がそこで再び響く。「お前に敵などいないんだ。誰にも敵などいないんだ」
これは単なる平和主義ではない。敵を想定しなければ自己を保てないという、近代社会の脆さを射抜く視線だ。
他者を排除して成立する強さは、結局のところ常に敵を探し回らねばならない。
今のSNSの議論。毎日、誰かがフォロワーを増やすプロレスだとしても新しい議論をしてる。
トルフィンが辿り着いたヴィンランドは、暴力の物語を降りた者たちが、傷だらけのまま「共に生きる道」を試みる場所だ。争わずに存在するという、極めて困難な哲学実験である。
作品は問いかける。「あなたが『敵』と呼んでいるものは、本当に敵だろうか」と。
この物語構造を見ていて思う。
僕たちは今、「勝つことを目指す時代」から「継続することを目指す時代」の転換点にいる。この作品を20年描き続けた幸村さんは、思想的に時代の最先端にいる。古い時代を描きながら。
遠藤周作が描いた愛は、幸村さんに影響を与えていたのだろうか?
『ヴィンランド・サガ』は、単なる歴史漫画ではなく、この新しい時代をどう生きるべきかを示す、教科書のような作品だと思う。
戦いを捨てることこそが、最も困難で、最も高貴な選択なのだと、この作品は教えてくれる。
月曜日の対談を前に読み直しているのだが、静かな興奮が止まらないし、心の中で作者とたくさん話してる。
対談の時間が足りないが、楽しみすぎる。 December 12, 2025
少年時代がずっと昔のことのよう…と思ったら実際に連載20年経ってる。
少年トルフィンに惹かれて読み始めたけど、舞台がどこに移っても面白さは変わりなかったな。
完結したら手放すかな〜と思ったけど、成長したら息子に読ませたい。 December 12, 2025
ヴィンランド・サガ 2期23話
トルフィンの立志がかっこよすぎて、
これまでの全伏線回収で、
真の物語を見たってかんじ
感動!!!
テーマとキャラクターディベロップメントが秀逸、一生忘れない December 12, 2025
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