南米に「ギザ歯」哺乳類は実在したのか！？
#古知累論文紹介

恐竜が大地を闊歩していた白亜紀後期。

足元では、小さな哺乳類たちも独自の進化を遂げていました。

その中でも特に繁栄していたのが、「多丘歯類（たきゅうしるい）」と呼ばれるグループです。

ネズミのような姿をしていて、植物や昆虫を食べていたと考えられています。

彼らは北半球（ローラシア大陸）では非常に多くの化石が見つかっており、多様な環境に適応していました。

しかし、南半球、特に南米大陸（ゴンドワナ大陸の一部）における彼らの存在については、長年議論が続いていました。

「南米にもいたはずだ」

そう考える研究者は多かったものの、決定的な証拠がなかったのです。

南米で見つかる化石は断片的で、「ゴンドワナテリウム類」という別のグループと区別がつかないものばかりでした。

ゴンドワナテリウム類は、正体不明な点が多い南半球特有の哺乳類です。

これまでの発見は、「多丘歯類かもしれないし、ゴンドワナテリウム類かもしれない」という曖昧なものばかりでした。

そのため、「南米に多丘歯類はいなかったのではないか？」という意見さえあったのです。

そんな長年の論争に、ついに決着をつける発見が報告されました。

場所はアルゼンチンのパタゴニア地方、ラ・コロニア層。

発見されたのは、一本の小さな上の奥歯（第一大臼歯）です。

研究チームは、この新種の化石を「ノトポリテレス・ジョエリス（Notopolytheles joelis）」と命名。

名前の由来は「南の（Noto）」「多数の突起（polytheles）」という意味です 。

この歯には、多丘歯類である決定的な証拠が刻まれていました。

それは、歯の表面にある突起（カスプ）の並び方です。

この化石は、突起が「3列」にきれいに並んでいたのです。

具体的には、外側に7個、真ん中に8個、内側に4個の突起がありました（7B:8M:4Lという式で表されます）。

この「3列の突起」という特徴は、多丘歯類、特に「キモロドン類」と呼ばれるグループに典型的なものです。

これまで南米で見つかっていた化石にはない、明確な特徴でした。

さらに、このノトポリテレスには面白い特徴もありました。

外側の突起の列が、他の列よりも低い位置にあったのです。

これは、北半球の仲間にはあまり見られない、独自の進化を遂げた証拠かもしれません 。

南米という隔離された環境で、彼らなりに食べ物を噛む仕組みを変化させていた可能性があります。

この発見が意味すること？

まず、南米大陸にも確実に多丘歯類が存在していたことが判明しました。

そして、彼らは謎多きゴンドワナテリウム類と、同じ時代、同じ場所で共存していたことになります。

これまで「どちらのグループの歯か？」と議論になっていた他の化石（アルジェントディテスなど）についても、再評価が進むでしょう。

元論文URL→　https://t.co/t7DdYQtKxD December 12, 2025

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