**[毎日更新]吹奏楽テキストドラマ

《Brass Roots — ブラスルーツ》
第13話「“息が重い”——城山の気づき」**

強化週間2日目。

昨日の練習の疲れは残っていたけれど、
結衣の足取りは軽かった。

（昨日……息が伸びたの、ほんとに嬉しかったな……
もっと上手くなれる気がする）

そんな気持ちが胸の中にずっと灯っていた。

教室に入ると、先輩たちの音がすでに響いていた。
鋭くて、太くて、壁まで届くような“伝統のパワーブラス”の音。
その迫力に、結衣は思わず息をのむ。

今日は8人全員でのパート練習の日。
自然と背筋が伸びる。

橘先輩の合図でウォームアップが始まり、
8人が同時にロングトーンを吹く。
息を押し出すような音の密度に、空気が震える。

結衣も昨日習ったとおり、
“上ではなく前に息を出す”イメージで吹いた。

その瞬間、隣の城山彩音が驚いたように結衣を見た。

「……結衣ちゃん？」

（な、なにか変な音出しちゃった……？）

不安でいっぱいになった結衣に対し、
城山はゆっくり、はっきりと言った。

「今の息……“重い”。
悪い意味じゃなくてね。
音が太くなる前の、すごくいい重さだよ」

「……えっ」

「昨日よりずっといい。
何があったの？」

「えっと……澪先輩と明日香先輩が、
無音ロングトーンとか……いろいろ……」

城山はすぐに納得したように笑う。

「あ〜……あの二人、絶対やりそう」

その会話を橘先輩が聞きつけ、
結衣の音に耳を澄ませた。

「天野、
今の息、いい。
その調子でメロディ吹いてみて」

緊張で身体が熱くなる。
8人の視線が集まる中、
結衣はそっと吸い、音を出した。

まっすぐで、息の奥に少し重さを感じる音。

彩音がすぐに反応した。

「……ほんとに変わった」

広瀬先輩も優しく頷く。

「空気の質が昨日とは違うね。
これは……伸びるよ、結衣ちゃん」

橘先輩が短くまとめる。

「波に乗る前の音だ。
そのまま続けろ、天野」

胸の奥がじんと熱くなる。

それから8人で“伝統のパワーブラス曲”のユニゾン練習に入る。
橘先輩の息吸い一つで、全員の音が同時に放たれた。

ドンッ！

空気を押し返すような音圧。
でも結衣は昨日より“怖くない”。

（波に逆らわない。
ただ……前へ。
息の流れに乗る……）

音を強くしようとせず、
ただ息の道筋だけを意識した。

——その瞬間。

自分の音がふっと、
先輩たちの分厚い響きの“上”に乗った気がした。

ほんの一瞬。
でも、確かに混ざった。

城山が驚いたように笑う。

「ね、やっぱり。
結衣ちゃん……今日、すごいよ」

橘先輩も振り返り、
簡潔にほめてくれた。

「よく聴けてる。
今日の天野はいい」

胸が弾けそうだった。

（城山先輩に認められるの、嬉しい……
でも……負けたくもない……！）

彩音はまっすぐ結衣を見つめた。

「結衣ちゃん。
私も負けてられないな、これ」

その言葉は、
ライバルとしての宣言であり、
仲間としての敬意でもあった。

結衣は胸の奥で静かに誓う。

（もっと……強くなりたい）

その日、結衣は
自分の音が変わり始めた瞬間 を確かに感じた。

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真鍮のゴールゼロスタンド出てた…重厚感やばくて欲しすぎるんだけど誰か止めて😂

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