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2025.12.09 19:00
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12/9プレマーケットサマリー
Ⅰ.米国市場・世界経済マクロ
・米株はFOMC直前で小幅安。S&P500とナスダックはわずかに下落、VIXは約1割上昇し、**「ハト派利下げ」ではなく“ややタカ派寄りの利下げ”への警戒**が意識されている。米10年金利は4.1%台後半、2年金利は3.6%台へじり高となり、デリバティブ市場は今回の25bp利下げをほぼ織り込みつつも、その後の追加利下げペースに疑問を持ち始めている。
・NY連銀調査では**家計のインフレ期待は全期間で概ね安定し、雇用見通しも改善**しているが、一方でFRBの先行きガイダンスに対する政治的圧力が強まっている。英マン・グループのチーフエコノミストは、「次期議長が政権の意向を強く受けFRBの独立性が損なわれれば、長期金利を抑えるために大規模なQE再開が必要になり得る」と警鐘を鳴らしている。
・次期議長人事を巡っては、パウエル体制の下でもFOMC内部の意見対立が残ること、タカ派・ハト派双方からの「3回目の利下げは不要/不十分」との異論が想定されている。候補の一人とされるハセット氏は、FRBが6カ月先までの金利パスを明示すること自体を「無責任」と批判しており、**今後は“ドットチャート依存”からの転換が議論になるリスク**がある。
・BIS報告書は金相場急騰の背景として、**金が「安全資産」からレバレッジを伴う投機的資産へと変質しつつある**点を指摘。ETFやデリバティブ経由の短期フローが増えたことで、地政学リスクや実需だけでは説明しきれないボラティリティ上昇局面が増えている。
・トランプ政権の通商・産業政策は、複数のルートからボラティリティ要因となっている。水資源条約違反を理由とした**メキシコへの5%追加関税警告**に加え、米農家支援120億ドル拠出と引き換えに農機メーカーへ値下げを迫る姿勢が示され、農業・機械セクターを巻き込んだ政治リスクとなっている。
・エネルギー・環境面では、トランプ政権による**新規風力発電プロジェクト禁止の大統領令が連邦地裁で違法と判断**され、洋上風力を含む大型案件の再開に道筋がついた。一方で、政権は化石燃料産業の規制緩和を継続しており、再エネ投資には法廷リスクと政策リスクが共存する形となっている。
・対中安全保障では、国防権限法案に**中国バイオ企業への政府契約禁止と、AI・半導体・量子など軍事転用技術への対中投資規制(Biosecure Act/FIGHT China Act)**が盛り込まれた。対象はBGIやWuXi AppTecなど「中国軍関連企業リスト」掲載企業にとどまらず、拡大余地がある。AI・先端半導体向け投資の一部は、米国内や同盟国へのリダイレクトを促される構図が強まっている。
・SKハイニックス株は、韓国取引所から「投資注意銘柄」に指定されたことでボラティリティが上昇。AIブームを背景に外国人資金が集中していたことが要因とされ、**HBMサプライヤーでも“人気過熱銘柄”への当局の目線が厳しくなっている**。短期的には建玉整理と需給悪化がリスク。
・トランプ政権は政府運営でも**「人員削減+AI活用による効率化」を公式アジェンダに組み込み**、各省庁にオフィス閉鎖・成績不良職員の免職・AIを活用した事務処理の自動化を指示している。DEIプログラム廃止や政治任用者の権限強化とセットで進むため、行政コスト削減と同時に政策運営の恣意性が増すリスクにも留意が必要。
・米議会では、メディア・エンタメ再編にも政治リスクが顕在化。Paramount SkydanceによるWarner Bros. Discoveryへの敵対的買収提案に対し、ウォーレン上院議員は「五重警報レベルの独禁案件」と批判しており、**大型M&Aの成否がメディア株だけでなく、クレジット市場にも波及し得る**。
・NY連銀調査に加え、米消費者の景況感や雇用見通しは徐々に改善している一方で、Mag7の成長鈍化を指摘する声も増えている。ヤルデニ氏は**Mag7への過度な集中から、産業・金融など“旧来セクター”への分散を推奨**しており、AIブームの恩恵が広がる過程でセクターローテーションが進む可能性が高い。
Ⅱ.AIトレンド・半導体・テック
1. プラットフォーム・規制・対中輸出
・トランプ大統領は、**NVIDIAのH200を条件付きで中国輸出容認**する方針を示し、習近平国家主席にも伝達した。H200の売上高の25%を「米国への還元」として徴収する案が報じられており、CTEEでは台湾生産→米国輸入時に課す“事実上の輸入税”として扱う見通しが示されている。BlackwellやRubinは現時点では対象外とされる。
・一方、米司法省は**H200を含む先端GPUの対中密輸ネットワークを摘発**。偽装発注や迂回輸出により制裁対象国や軍関連組織にGPUが渡っていた事例が明らかになっており、輸出規制は「許可制と司法当局による事後摘発」の二重構造になりつつある。
・GAIN AI法案の国防権限法案への組み込みは**NVIDIAなど業界ロビーの結果として見送り**となり、一方でSAFE法案など別ルートの規制が議論されている。Tom’s Hardwareは、SAFE法案が中国の先端チップアクセスを抑制しても、AIアームズレース自体は止まらないとの見方を紹介しており、**「規制は続くがAI投資サイクルは鈍化しない」構図**が確認できる。不確かだが、規制強化によって米国内・同盟国への設備投資がむしろ加速する可能性は一定程度考えられる。
・トランプ政権は**AI規制を連邦レベルの単一ルールに統一する大統領令**に今週署名する方針。各州ごとのバラバラな規制を排し、「AIを米国の国策産業として扱う」姿勢が示されている。これにより、モデル提供企業・インフラプロバイダーにとってコンプライアンス面の不確実性はむしろ低下する可能性がある。
・同時に、国防権限法案では中国バイオ企業および先端技術分野への対中投資規制が盛り込まれ、BGIやWuXi AppTecなどが念頭に置かれている。バイオ分野でも**DNAデータがAI・監視技術と結びつく「戦略資産」として扱われつつあり、AI+生物データの組み合わせに対する地政学的警戒が顕著**。
2. AIサーバー/半導体サイクル:台湾サプライチェーン
・AWSは**3nmプロセスのTrainium3 UltraServer**を正式発表し、将来世代のTrainium4も視野に入った大規模投資を進めている。ハードウェアでは緯穎(Wiwynn)や貿聯(BizLink)など台湾勢7社が主要ベンダーとなり、ASIC設計面では次世代で世芯(Alchip)も恩恵を受けるとされる。**クラウド事業者の自社ASICシフトにより、GPU一極から「GPU+ASIC」の二本柱への構造転換が進行**。
・NVIDIA向けでは、緯創(Wistron)が**GB300/B300サーバーの量産立ち上がりで11月売上が前年比+194%、業界2位規模まで拡大**。緯穎もAWS ASIC案件で売上倍増となっており、両社とも少なくとも2026年末までの受注残を確保している。
・廣達(Quanta)は**11月売上が過去最高(+36.5%)**、AIサーバー売上は来年3桁成長、サーバー売上に占めるAI比率が8割に達するとの見通し。GB200/300ラック出荷は11月に1000〜1100ラック、Q4通期では前期比+65%とされ、2026年にはAIキャパシティを現行の2倍超に増強する計画。
・英業達(Inventec)も、PCの季節要因でQ4全体は鈍化しつつも、**HGX B200/B300中心のAIサーバー出荷が売上を下支え**。現状はL6(マザーボード)主体で単価は低いが、2025年にはAIサーバー比率が5割超へ上昇する見込みで、バリューチェーン内の“中位レイヤー”にも利益プールが拡大している。
・先進パッケージングでは、辛耘(Scientech)が**1〜11月売上103.9億元(前年比+17%)で過去最高**。CoWoS向け装置の受注が2026年後半まで視界良好とされ、台南の新工場(2027年後半稼働予定)で設備能力を倍増する計画。TSV検査では蔚華(Spirox)が**非破壊TSV検査装置SP8000Sの量産受注**を獲得し、深いビア構造の量産歩留まり改善に貢献している。
・冷却分野では、奇鋐(AVC)、雙鴻(Auras)、富世達(Fositek)の「水冷三雄」が**GB300向け水冷プレートやマニホールド、クイックディスコネクトで11月売上過去最高**。AVCはAIサーバー水冷板で約7割のシェアを持ち、iPhone 17 Pro Max向けVC採用も加わり、**サーバー・スマホ両面で熱設計のキープレイヤー**となっている。
・光通信では、TrendForceが**800G/1.6T向けEMLレーザーの供給ひっ迫**を指摘。NVIDIAが主要供給枠を押さえた結果、他社向けの納期は2027年以降とも報じられる。CWレーザーや代替アーキテクチャ、IET-KYなど台湾勢への外部委託需要が急増しており、**AIデータセンターのボトルネックがGPUから光源・モジュール側にシフト**しつつある。波若威(Browave)はCPO期待も相まってストップ高、AIデータセンター関連の新たな勝ち組候補と見なされている。
・メカ/材料では、川湖(King Slide)と台燿(Taiwan Union)が**11月売上で過去最高**。川湖は次世代ラック向けスライドレール、台燿は800GスイッチやAIサーバー向け高周波・高速CCL(M8/M9グレード)が牽引。ABFでは欣興(Unimicron)が11月売上+20%、外資は**AI ASIC向けABFが2025〜26年成長ドライバー、CCL不足は2026年Q3まで継続**との見方を示している。TPCAは、AIサーバー需要がPCB版図を再編し、中国はHDIなど中級品でシェアを拡大する一方、倭国はABF・先進封止で強み、台湾はTSMC連携を軸にAIサーバー中枢を担う構図を整理している。
3. 大手テック・AIプラットフォーム
・Googleは**Gemini搭載AIグラスを来年投入し、2026年にはAndroid XRプラットフォームと連携したAIメガネを本格展開**する計画。Samsung Galaxy XR向けの新機能や有線XRメガネ「Project Aura」も合わせ、MetaのVision Pro/Questと競合する空間コンピューティング・エコシステム構築を狙う。
・アップルのチップ開発責任者ジョニー・スロウジ氏は、「すぐに辞めるつもりはない」と退社観測を否定。Wccftech経由の報道では、**NVIDIAの“CUDA Moat”が将来的に崩れ得る**とのジム・ケラー氏の見解が紹介されており、カスタムアクセラレータやマルチバックエンド対応のソフトウェアスタックが整えば、GPUエコシステムのロックインは相対的に弱まるとの指摘がある(技術的には妥当だが、実際にどの程度シェア変動をもたらすかは不確か)。
・IBMはデータストリーミング基盤Confluentを**約110億ドルのオールキャッシュで買収**。リアルタイムデータ処理とクラウド基盤を自社AIスタックに取り込み、AWSやAzureに対抗する「データ+AIプラットフォーム」としての位置付けを強化する狙い。
・テスラは、モルガン・スタンレーが**ロボット/AI素材はほぼ織り込み済みで株価は割高**と判断し、投資判断を引き下げたことで株価が3%超下落。ロボットやFSDへの期待は残るものの、EV需要鈍化と価格競争が重石となっており、AIストーリー単独ではバリュエーションを正当化しにくいとのトーン。
・米政府は別途、**政府業務の効率化にAI活用を組み込む新指針**を公表しており、行政IT需要、特にRPAやLLMエージェントの公的セクターでの導入拡大余地が示唆される。
・DeepSeekの創業者・梁文鋒氏は、Nature誌の「2025年の科学界10傑」に選出された。**オープンソースLLMで世界を驚かせた中国発企業**として位置付けられており、クローズドモデル中心の米ビッグテックに対する“オープンソース陣営”の象徴的存在となっている。
4. ロボティクス・その他AIテーマ
・CTEE・SAの報道を総合すると、トランプ政権は**ロボットを含むAIオートメーションを「国内産業強化」と「政府効率化」の中核ツールとして位置付ける方向**が読み取れる。Skild AIへのソフトバンク・NVIDIA参画協議は、物理ロボットではなく「汎用ロボット脳(Skild Brain)」に特化した投資であり、Tesla Optimus型のハードウェアとは別ラインで“ソフトウェア定義ロボット”市場が形成されている。
・BlackRockは、**AI投資波はまだ始まったばかりであり、「チップ製造」「エネルギー供給」「銅線などインフラの“ショベル売り”企業」が最大の勝者になる**との見方を示す。データセンター電力需要は2030年までに倍増するとの前提であり、発電・送配電・ガス供給・銅関連の中長期テーマ性が強調されている。
・米司法省によるH200密輸ネットワーク摘発、バイオ・AIへの対中投資規制、BGIを巡るDNAデータの軍事転用懸念など、**AIと国家安全保障が密接に結びつくトレンド**が一段と明確になっている。これにより、AI関連銘柄は構造成長と同時に、制裁・規制・輸出管理に伴う“政治プレミアム/ディスカウント”を常に織り込む必要がある。
Ⅲ.まとめ
・マクロでは、FOMCによる**「タカ派気味の利下げ」とFRB独立性を巡る政治圧力**が同時進行しており、長期金利とボラティリティの上振れリスクが意識されている。メキシコ関税や農業支援、風力発電を巡る訴訟など、トランプ政権の政策はコモディティ・再エネ・通商に断続的なショックを与え得る。
・AI・半導体では、NVIDIA H200の対中輸出容認と密輸摘発、Biosecure/FIGHT China法案、SAFE法案などを通じて、**対中テクノロジー制裁は「選択的容認+厳格管理」フェーズに移行**している。一方で、AWS Trainium、NVIDIA GB300、先進パッケージング、光インターコネクト、水冷などへの設備投資は少なくとも2026〜27年まで高水準が続くシナリオが記事群から読み取れる。
・株式フロー面では、Mag7への集中からインフラ・金融・産業への分散を促す論調、AIテーマ内でも**「GPUそのもの」から「ショベル売り(設備・エネルギー・材料)」への重心シフト**が顕在化している。SKハイニックスの投資注意指定やテスラの格下げは、人気テーマ銘柄に対する当局・投資家の視線がよりシビアになっていることを示す。
・投資家のポジション管理上は、①FRB独立性と長期金利の上振れ、②対中制裁と輸出管理の線引き変更、③AIインフラのボトルネック(パッケージング、光源、冷却、材料)の推移、の3点がレジーム変化のトリガーとなり得る。これらが全てAIサイクルと地政学リスクに直結している点を踏まえ、**マクロ金利リスクとAIバリューチェーン特有の供給制約リスクを分けてモニターすることが重要**と考えられる。 December 12, 2025
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