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鴨川
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2025.11.27 08:00
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### 第六章 春を待つ人々
一月十日、雪が解け始めた。
鴨川の氷が割れ、黒い水が再び流れ出す音が聞こえるようになった。
美咲は、店を開けた。
看板は新しく書き直した。
「佐藤和紙 葉の紙 ご自由にお入りください」
小さく、控えめに。
表の戸は朝から夜まで開け放ち、
工房の釜には毎日火を入れている。
売る紙は一枚もない。
ただ、誰かが来たら、お茶を出し、炬燵に招き入れるだけ。
最初に来たのは、四十代の男性だった。
スーツはよれよれで、目は充血している。
玄関で立ち尽くし、声が震えた。
「……ここが、あの、葉の紙の……?」
美咲は黙って頷き、奥の座敷へ通した。
炬燵に座らせ、古びた木箱を差し出す。
蓋を開けると、四百八十六枚の葉の紙が、重ねてある。
男性は一枚取り、光に透かした。
中央に浮かぶ小さな枯れ葉。
それを見て、突然、肩を震わせ始めた。
声にならない嗚咽が、座敷に響く。
三十分ほど泣き続けてから、彼は言った。
「妻と娘を……交通事故で一度に……
もう生きる意味が……」
美咲は何も言わず、ただお茶を注ぎ続けた。
男性は最後に、深く頭を下げて帰った。
紙は持って帰らなかった。
「持って帰る勇気が、まだない」
そう言って。
それから、人が少しずつ増えた。
・がんの末期で余命三か月の女性
・息子を自死で亡くした母親
・会社をリストラされ、借金で首が回らない五十代のサラリーマン
・不登校の高校生
・DV夫から逃げてきた若い母親
誰も何も買わない。
ただ、座敷に座り、紙を見て、泣いて帰っていくだけ。
美咲は誰にも説明しない。
ただ、必要な時にだけ、
「春は、必ず来ますから」
と、一言だけ言う。
二月に入ると、梅が咲き始めた。
鴨川沿いの梅は、雪の中で赤く燃えている。
ある日、最初に来た男性が再び現れた。
頬は少しふっくらし、目は澄んでいた。
「生きてみようと思います」
そう言って、一枚の紙を差し出した。
去年の秋に自分で落ち葉を拾い、漉いたという。
中央に、紅い紅葉が浮かんでいる。
「これを、次の人に……」
美咲は受け取り、木箱の一番上に置いた。
三月、桜が咲く頃。
店はもう、京都のどこにも載っていないのに、
必要な人には不思議と辿り着ける場所になっていた。
美咲は毎朝、釜に火を入れ、
新しい楮の皮を煮て、
紙を漉し続ける。
葉は入れない。
葉を入れるのは、
本当に死にたくなった人だけ。
庭の老木は、もう完全に枯れていた。
でも、美咲は山奥から小さな苗を一本だけ見つけて植え直した。
まだ三十センチほど。
風が吹けば折れそうで、雪が降れば埋もれてしまいそう。
それでも、春になると、
小さな芽が二つ、三つ、顔を出した。
美咲はそれを眺めながら、
祖父の声を思い出す。
「紙はな、人が必要とする限り、なくならん」
そう。
人が、誰かのために、
最後の葉を残 Mazてくれる限り、
春は必ず来る。
第六章 終わり November 11, 2025
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